影をひろいあつめて

毎日一言日記

寂しくない11

昔書いた文章を読んでいた。息が詰まる。句読点が全然なかったからどうやって息してんだろうと思った。だから頭痛かったのかもしんない。もう「こっち」に来てから4年も経つ。 ゆっくり肺を慣らして来たから今は息がしやすくなった。生きやすくなるってのは息がしやすくなることなんだと思った。でもずっと走ってるみたいだったから今は走ってない理由を探している。あの時一緒に走っていた友達はあの頃から今もずっと走っているみたいだ。もう渋谷にはいないけれど。走っているって素敵だ、走っているのをみると、なんだか泣きたくなってしまう。

 

「枕を買いなさい」とダイアナ。

 

とても真面目に生きている。ご飯食べないで映画館に映画を観に行ったり、古本じゃない本を買ったり小難しい事考えたり、財布を無くしたり、そうやって真面目に生きている。「ひようたいこうか」とか「コスパ」とか気にしながら一生懸命生きているけれど数字はあまり得意ではないから足してかけて割って引いて足して引いてたぶんいつもマイナス。数学はダメなんです。ごめんなさい、どうか許してください。

 

知っていたら面白かっただろうなってことがたくさんある。だからしばらく街のこと考えるのはやめていた。だって目の見えない人が街をどうやって認識してるのかわからなかったのだ。

 

「枕を買いなさい。」とダイアナ。

 

「おまえのせいだよ(君のおかげだよ)」と言われるたびに、違う、もらってるのはずっと私の方だよと思っている。悔しいこと呑み込んだり吐いたりしながらずっと考え続けているけれど、記憶はなにもかもがかけがえがないんだ。時間に勝つ方法はそれしかないのかもしれない。

 

夏は時間がいつもの3倍速で進む。良いことも悪いことも春と冬の3倍起こる。セコくてずるい事に気分が落ちることもあるし、明日死んでも良いくらい満ち足りた日もある。私は何もかもが嘘だから、どうしても許せないことでも真ん中を探したりして、観たことない世界が見たいから映画を観るためにお金を稼いでいる。それが悲しくなって公園の砂場で信念を探すこともある。ずっと前に名前無くしてるから、今更どんな名前だっていいやって思ってるよ。

 

渋谷の作業カフェで後ろに座っていた二人組は色々な仕事の世話話や愚痴のようなことをずっと話していて、「テレビだけが今のメディアの全てじゃないですからね」と言った。そうやってみんなテレビを作っている。

 

図書館で恋人たちは名前を探しあっている。

「クールアンドザギャング」「パリの夕暮れ時」頬を撫でながら見つめあっている。真っ赤な光が司書部屋に入り込む。

「顔つきが大人になったね」とエリン。

寂しくない10

日々をこなしていると思考が平坦になっていく気がする。新しい単語は覚えていない。毎日脳細胞を増やす事は私にとって億劫極まりなくて、逃げる事を美しいことのように言ってしまえば「生きることで精一杯」が正しい。精一杯な人はたくさんいる。ボロボロのカウボーイハットの上にドロドロに汚れたニューヨークヤンキースのキャップを乗せた意味わかんない装いのタガが外れたジイさんは「オレの人生は薔薇色だ、靴が塊を荒野に運ぶ!おかしなことばっかだろ、だからIOCヤンキースに色目を使う。」と叫んでいた。若者は路上で宴をしていた。無理しなくてもいいじゃん、薔薇色の人生なんかどこにもないよ。水が全部を浄化する。昔のこともこれからのことも。


歩きながら書いている文章と座りながら書いている文章はリズムが違う。歩いている時の文章は「.../_::…/_::」って感じで、座ってる時の文章は「__<<°__」って感じ。カフェで書くとカフェみたいな文章になる。悔しい、もう少し格好良く言いたいのに。この文章はsia聴きながら書いた。


昔に撮った写真たちを見ていたら眩しくて泣けてきた。なにもかもあの頃と一緒のことはない。iphoneでも写真は撮れるけれど、やっぱりセンサーがでかいカメラとは違うと思う。上位下位とかじゃなくて、目的の話。


最近は人間iiなちゃんに勧められてガンダムを見ている。小さいところから大きなところまで体系的に見られるようにカリキュラム(笑)を組んでくれたので、劇場版の3部作を見たときにはみんな死んじゃってすごく悲しくなった。人が死ぬって悲しいよね、物語の中だろうけど、昔から知ってるんだもん。


持ってるとか持ってないとかもうやめにしよう、アタシたちはみんな人間だよ、って思いたいと思ってから何百年経ったんだろう。でもそんなのは都合が良すぎる。私たちは形があるから湖みたいに均したりはできないじゃん。でも頭良くなりたいから本はできるだけ読んでる。傘は持っていないけど、雨の日の図書館って良いですよ。本のある空間が膨張して迫ってくる。ここで眠ったら柔らかいだろうなと思う。死んだら一緒になろうね。

インスタグラム駄文arc.1

起きたのは昼近くで、窓際のベッドは遮光カーテンのクリーム色に溢れる。汗ばんだ首筋は少し油と餃子の匂いがする、昨日はシャワーを浴びなかったからだ。ビールは苦労の味がするって上司が言う、だから苦いんだ。寝起きの口には苦労の味が広がる。ここはこの世界の真ん中で端っこのベッドルーム。カーテンの一つ向こうには間違いなく世間ってやつが広がっているけれども、まだ私はこの部屋に残った少しの秋を、保存しておきたいのだ。

寂しくない9【離れても連帯セルフQ&A】

i-dの企画『Keep Distance In Solidarity』の、離れても連帯Q&A受けたかったので自分でしました。

 

主にSNSを使い、写真、映像、文章など幅広い表現活動をしているさようならアーティスト(概念)さん(21)

 

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──新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今あなたが属している業界や産業はどんな打撃を受けていますか? 応援・支援するにはわたしたちに何ができるでしょう?

 

現在雇用形態としては正社員ですが、派遣会社で現場の仕事が主なので、受注が一切なくなり、会社の収入はゼロという状況です。雇用調整給付金の申請の話もさせてもらったけど、実際に国から給付されるのは2〜3ヶ月後と言われていわれており、自宅待機の分の給料については借り入れをして休業補償として支払ってくれると言う話になりました。幸い生活には大きな問題はありませんが、収入は2~3割減という感じ。本当は100%支給を要求するべきかもしれないけど、お世話になってるからできないです...。こういうところは本当によくないな...。

 

ミニシアターや個人経営の喫茶店など、長引く緊急事態宣言の中、閉業に追いやられる事業主も多くて、クラウドファンディングやテイクアウトで支援するという取り組みも多く行われているようですが、普段から食事や娯楽に割ける予算があまりないため、支援できないのが辛いです。

 

保障なき自粛要請に対してとても大きな憤りを感じているし、本当にどうにかしなければコロナが終わったあと、日本社会はさらに格差社会が広がり取り返しのつかないことになると危機感を感じています。ネットで声をあげるとか、申し入れの署名にサインをすることくらいしかできていないことが本当に悔しい。

 

──自宅待機以降に新しく始めたこと、もしくはポジティブな影響・変化がありますか?

 

毎日家にいるので、こういう時こそ内面的にも成長する機会だと思っているんだけれど、やっぱり自分のだらしなさや平凡さを目の前に叩きつけられてショックを受けてしまいました。でも少しでも有意義にすごしたくて、映画や本などたくさん見るようにしています。Netflixには教育や歴史、多様性、哲学のコンテンツが豊富なので、勉強する機会になったかなと思います。あとは色々なことがどんどんオンラインに対応して行っているので、以前よりも勉強会とか、距離や時間を選ばない分アクセスしやすくなったのはよかったです。

 

──コロナのビフォー/アフターで、変化した自分の考え方や、社会への認識があれば教えてください。

 

やっぱりこういう問題が起こった時に、必ず間違った情報や差別を扇動する発言、分断を招くような情報が氾濫してしまう。それに対して、正しく怒ったり、理解するためには正しい知識や歴史に対する認識が基盤として重要だということを実感をもって知れた。

──自宅隔離中の人に試してほしい、オススメの行動やコンテンツを教えてください。

 

 平野レミのお家料理動画、あれは優しくてよかったですね。平野レミ本人が出ているんですけど、クタクタの服きてるし化粧してない近所のおばちゃんみたいな格好で出てくるんですよ。紹介している料理も、まな板や包丁も一切使わない料理で、数分でちょちょいと作れちゃうやつ。SNSとかみているとみんなクッキー作ってたり壁に映画投影してチルしたりそういうのばかり流れてくるけど、多くの場合はずっとパジャマ着て過ごしているし、化粧だってしない日は多いし、ひだまりで本読んでる日ばっかりじゃないだろうし、sns向けじゃない生活は人の目に触れないから、比較したりして泣きたくなっちゃう人はたくさんいると思う。ブルジョワジー的な丁寧な自粛生活に対するある種アンチテーゼというか。自粛期間で涙腺がゆるくなってしまったので、そういう種類の優しさに触れるとダバダバ泣いちゃいますね。

今はスプラウトの種を買って育ててる。ザルとボウルがあれば誰でも簡単に育てられるので、寂しいからペット飼いたいけど飼えない人や、ペットをすぐ殺しちゃう人とか、単調な自炊に飽きた人はスプラウトを育てることをおすすめします。春がウキウキするみたいに、生命のスピード感を目の当たりにする時少しだけ元気になれる。自分の手で育て食をまかなうことで市場の原理から離れられた存在のような気持ちになるのも都市型のソーシャルディスタンス生活でのメンタルヘルスを良好に保つ手段だとは思います(笑)

 

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──自分の今の気持ち・気分を音楽で表すとしたら?

今の気持ち、というわけではないけど、Juliette Armanet の「A la folie」という曲を最近ずっと聞いています。今期話題の映画「パラサイト」の監督が注目の次世代の若手監督を紹介する記事で、濱口竜介の「寝ても覚めても」の映画について触れていて。海外の映画祭向けのティーザーで使われていた曲です。映画は正直すこし残念だったけど、ティーザーを見た時の衝撃はすごかったな。色が綺麗なんですよ。静かで寂しい。こんな監督がいたのか、と思いました。

歌の中で、「激しく抱きしめて」というフレーズが繰り返されるのですが、触れたいけど触れられない、会いたいけど会えない、これって苦しいことなんだ、苦しいのは愛があるからなんだ、といつも思い出します。

 

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──2020年2月の自分に伝えたい・教えてあげたいことは?

 

愛は難解で、死は突然訪れるし、社会は一人一人が変える。

 

──コロナ禍で人間の「良い面」も「悪い面」も浮き彫りになりました。あなたが見聞きしたなかで、忘れたくないと思う、印象的な出来事やエピソードがあれば教えてください。

 

人間が提唱してきた理性や倫理、「絆」がいかにもろくて、いつでも簡単に壊せてしまうくらい今の形を保っていることがいかに危ういかということが浮き彫りになったと思います。それは決して人間の本来性ではないとおもっていて、それが都合がいいとされる管理社会が作り上げてきた脆さだと思います。どうしても分断されてしまいがちだけれど、幸いウィルスに人種主義の思想がないおかげで、やっと私たちは本当に分かり合えるようになるんじゃないかという気がしています。そうなったらいいなと思っています。

 

──コロナ禍が落ち着いた後、日本の社会にはどう変わっていってほしいですか?

 

コロナを取り巻く傷や混乱、大きくまとめたコロナ禍は、限界まで搾り取ろうとする資本主義や成長経済信仰が生み出した人災だと思っています。

幸か不幸か、うちの国のトップは常に最悪なので、これでさすがにやばい、政治に興味を持たなきゃ、と思う人が増えたし、コロナを終えて、人間の尊厳とはなにかをもう一度見つめ直し、普遍的な生活保障を拡充させていく事、二度とコロナのような人災が起きないように、サステイナブルに転換していくいい機会だと思う。

 

<合わせて読みたい>

さようならアーティストはリトルマガジン『仕事文脈』にてエッセイで参加しています。

https://cltr.theshop.jp/items/29203589 

 

 

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寂しくない8

 ペパーミントみたいなあなたが適当な事をいうので、わたしはまるっきり狂ってしまって餃子を食べる旅に出た。外は大雨で傘なんか持たずに一年前のわたしなら出かける。扉を一つ開ければ心がネオンの街に出る。大きなビルとビルの隙間の子汚いシャオツーで海老餃子をつつくのが好きだ。タバコの煙で目が染みる狭い店内でハゲたリーマンが延々と愚痴を言うのを聞いていた。文句を言いたくなる気持ちが理解できてしまう。世の中には理不尽な出来事がたくさんあるのだ。


 変わらないものはない。それはただの観測で、それは必ずしも正しくはないかもしれない。馬鹿みたいに騒いで往路をかけた日に曖昧な約束をした。それが果たされなかったとしても片隅に約束を残せたことはとてもかけがえのない事のように思う。


 店員は何度来てもまるきり愛想がない。
「要一个青島」(チンタオ1つ)「知道了」(はいよ)、それからやる気のない様子でビールを届けてくれた。

寂しくない7

情緒もへったくれもないこ綺麗な居酒屋で頼もうがタコワサは美味しい。2月の早朝の渋谷は冷え込んで、たった今から冬が始まったような気持ちで人々が夜を楽しんだパーティーの後の道を歩く。そこら辺に転がったアルコールの瓶やタバコの吸殻も今は優しい気持ちだ。聞いてこなかったjpopの歌のない部分にブギーがあるなんて思わなかったから、天才だと思った。わたしは忘れちゃったかもしれないけど、撮ったフィルムは泣いちゃうくらい良い色が出ていた。時間が見落とした些細なことをネガは覚えていたんだ。ブギーだね、ディスコだね、情緒だ。

 

 

 

寂しくない6

鈍行電車に運ばれて空腹の私は見渡す限りの田んぼの上でうつらうつらと夢を見た。

決めなくちゃいけない事を先延ばしにするから全部がダメになった。いつもギリギリになってから行動するやつはもしかしたらうまく行ったかもしれない事を自分からダメにしてしまう。うまくいかなかった出来事がタンスに山積みでそれ以上は入らないのに、あぁあの言葉が見つからないねぇ、拾いにいかなくちゃ…

街に流れる大きな汚く淀んだ川には高い土手があって、遠くを一直線に走っているあの子の尻尾が揺れている。私は長い階段をずっと登っていた。私の頭上で一羽の鷹が大きく迂回した。空の上ぇで広い羽根を広げて空気を抱く、こんなにも優しい世界でただ一つだけ湖に降りる階段がなかった。埋まっちまったあの坂の曲がり角に、酔っぱらったじじいに会いにいけたらな。だからしかめっ面をしながら私は化粧をしている。過去を拾いにいかなくちゃ。