影をひろいあつめて

毎日一言日記

寂しくない9【離れても連帯セルフQ&A】

i-dの企画『Keep Distance In Solidarity』の、離れても連帯Q&A受けたかったので自分でしました。

 

主にSNSを使い、写真、映像、文章など幅広い表現活動をしているさようならアーティスト(概念)さん(21)

 

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──新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今あなたが属している業界や産業はどんな打撃を受けていますか? 応援・支援するにはわたしたちに何ができるでしょう?

 

現在雇用形態としては正社員ですが、派遣会社で現場の仕事が主なので、受注が一切なくなり、会社の収入はゼロという状況です。雇用調整給付金の申請の話もさせてもらったけど、実際に国から給付されるのは2〜3ヶ月後と言われていわれており、自宅待機の分の給料については借り入れをして休業補償として支払ってくれると言う話になりました。幸い生活には大きな問題はありませんが、収入は2~3割減という感じ。本当は100%支給を要求するべきかもしれないけど、お世話になってるからできないです...。こういうところは本当によくないな...。

 

ミニシアターや個人経営の喫茶店など、長引く緊急事態宣言の中、閉業に追いやられる事業主も多くて、クラウドファンディングやテイクアウトで支援するという取り組みも多く行われているようですが、普段から食事や娯楽に割ける予算があまりないため、支援できないのが辛いです。

 

保障なき自粛要請に対してとても大きな憤りを感じているし、本当にどうにかしなければコロナが終わったあと、日本社会はさらに格差社会が広がり取り返しのつかないことになると危機感を感じています。ネットで声をあげるとか、申し入れの署名にサインをすることくらいしかできていないことが本当に悔しい。

 

──自宅待機以降に新しく始めたこと、もしくはポジティブな影響・変化がありますか?

 

毎日家にいるので、こういう時こそ内面的にも成長する機会だと思っているんだけれど、やっぱり自分のだらしなさや平凡さを目の前に叩きつけられてショックを受けてしまいました。でも少しでも有意義にすごしたくて、映画や本などたくさん見るようにしています。Netflixには教育や歴史、多様性、哲学のコンテンツが豊富なので、勉強する機会になったかなと思います。あとは色々なことがどんどんオンラインに対応して行っているので、以前よりも勉強会とか、距離や時間を選ばない分アクセスしやすくなったのはよかったです。

 

──コロナのビフォー/アフターで、変化した自分の考え方や、社会への認識があれば教えてください。

 

やっぱりこういう問題が起こった時に、必ず間違った情報や差別を扇動する発言、分断を招くような情報が氾濫してしまう。それに対して、正しく怒ったり、理解するためには正しい知識や歴史に対する認識が基盤として重要だということを実感をもって知れた。

──自宅隔離中の人に試してほしい、オススメの行動やコンテンツを教えてください。

 

 平野レミのお家料理動画、あれは優しくてよかったですね。平野レミ本人が出ているんですけど、クタクタの服きてるし化粧してない近所のおばちゃんみたいな格好で出てくるんですよ。紹介している料理も、まな板や包丁も一切使わない料理で、数分でちょちょいと作れちゃうやつ。SNSとかみているとみんなクッキー作ってたり壁に映画投影してチルしたりそういうのばかり流れてくるけど、多くの場合はずっとパジャマ着て過ごしているし、化粧だってしない日は多いし、ひだまりで本読んでる日ばっかりじゃないだろうし、sns向けじゃない生活は人の目に触れないから、比較したりして泣きたくなっちゃう人はたくさんいると思う。ブルジョワジー的な丁寧な自粛生活に対するある種アンチテーゼというか。自粛期間で涙腺がゆるくなってしまったので、そういう種類の優しさに触れるとダバダバ泣いちゃいますね。

今はスプラウトの種を買って育ててる。ザルとボウルがあれば誰でも簡単に育てられるので、寂しいからペット飼いたいけど飼えない人や、ペットをすぐ殺しちゃう人とか、単調な自炊に飽きた人はスプラウトを育てることをおすすめします。春がウキウキするみたいに、生命のスピード感を目の当たりにする時少しだけ元気になれる。自分の手で育て食をまかなうことで市場の原理から離れられた存在のような気持ちになるのも都市型のソーシャルディスタンス生活でのメンタルヘルスを良好に保つ手段だとは思います(笑)

 

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──自分の今の気持ち・気分を音楽で表すとしたら?

今の気持ち、というわけではないけど、Juliette Armanet の「A la folie」という曲を最近ずっと聞いています。今期話題の映画「パラサイト」の監督が注目の次世代の若手監督を紹介する記事で、濱口竜介の「寝ても覚めても」の映画について触れていて。海外の映画祭向けのティーザーで使われていた曲です。映画は正直すこし残念だったけど、ティーザーを見た時の衝撃はすごかったな。色が綺麗なんですよ。静かで寂しい。こんな監督がいたのか、と思いました。

歌の中で、「激しく抱きしめて」というフレーズが繰り返されるのですが、触れたいけど触れられない、会いたいけど会えない、これって苦しいことなんだ、苦しいのは愛があるからなんだ、といつも思い出します。

 

youtu.be



──2020年2月の自分に伝えたい・教えてあげたいことは?

 

愛は難解で、死は突然訪れるし、社会は一人一人が変える。

 

──コロナ禍で人間の「良い面」も「悪い面」も浮き彫りになりました。あなたが見聞きしたなかで、忘れたくないと思う、印象的な出来事やエピソードがあれば教えてください。

 

人間が提唱してきた理性や倫理、「絆」がいかにもろくて、いつでも簡単に壊せてしまうくらい今の形を保っていることがいかに危ういかということが浮き彫りになったと思います。それは決して人間の本来性ではないとおもっていて、それが都合がいいとされる管理社会が作り上げてきた脆さだと思います。どうしても分断されてしまいがちだけれど、幸いウィルスに人種主義の思想がないおかげで、やっと私たちは本当に分かり合えるようになるんじゃないかという気がしています。そうなったらいいなと思っています。

 

──コロナ禍が落ち着いた後、日本の社会にはどう変わっていってほしいですか?

 

コロナを取り巻く傷や混乱、大きくまとめたコロナ禍は、限界まで搾り取ろうとする資本主義や成長経済信仰が生み出した人災だと思っています。

幸か不幸か、うちの国のトップは常に最悪なので、これでさすがにやばい、政治に興味を持たなきゃ、と思う人が増えたし、コロナを終えて、人間の尊厳とはなにかをもう一度見つめ直し、普遍的な生活保障を拡充させていく事、二度とコロナのような人災が起きないように、サステイナブルに転換していくいい機会だと思う。

 

<合わせて読みたい>

さようならアーティストはリトルマガジン『仕事文脈』にてエッセイで参加しています。

https://cltr.theshop.jp/items/29203589 

 

 

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