まちのひかり
タングステンの通路照明が窓の端に流れていく。私は高速道路を走る車の後部座席にいて、みんなはぐっすりと眠っていた。車の外はやけにオレンジ色で、焼け野原のようだと思った。海の向こうで戦争が始まった。
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朝寝坊を危惧しながら清々し青色の朝を迎えたらロシアが国境を超えていた。不気味な色の甲羅で身を包んだ戦車が石造りの街中を列を連ねて走る。昼夜構わず鳴り響くサイレンは病院の医療室にも、バイオリン教室にもワインの酒蔵にも学校の教室にも届いた。
空から
星が
たくさん落ちた。
家を追われた人々は街を出て移動を始めた。アメリカが介入した内戦や紛争は今までもたくさん起こってきたが、国連加盟国が対国戦争を始めるなんて思いもしなかった。
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わたしのまちではストーリーズにいつものような日々が連ねられた。
小学校では15分以上マスクを外すと濃厚接触になってしまうのを防ぐために、14分と59秒で給食を一度中断するランチタイムを続けていて、オンライン授業になった学生たちは街に遊びに行った。
本当はね、と話そうとしたら笑われた。知らなくていいよ、とあなたは笑う。
知らなくていいよ、君のこと。
ガソリンが高くなっていた。
ベルギーでフライドポテトが値上がりした。
ずっと緊張している。
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当たり前のことを言わないと当たり前のことは当たり前ではなくなる。
その速度は早い。イッセーノで終わりにする勇気がみんなに必要だった。
歴史と現在はどこまでも地続きだから「政治」は「難しい」。単純に「〇〇だ」と指差すことはできないけれど、私たちのレベルだって言えることはたくさんある。
話すこと、話さないこと、言いたいこと、言わないこと、それぞれの選択があってもいい。それくらいのことはわかっている。
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別に言わなくてもいいよ。君のこと。
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選択は尊い、その結果も等しい。
等しいが選択には必ず結果がついてくる。食べ物を食べたときに便をせずははいられないことや、水を飲む、という行為と、「水」が「飲む」と切り離すことができないように、いつもそこにあるものだということを意外と忘れてしまう。
言うこと、言わないこと、全部が選択だと言うこと覚えておきたいよ。
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「王国」や「誰か」はいないから、利己ではなくてローカルなハグや、ソーシャルな距離の内側のコミュニケーションに向き合う。
考えることは権威ではないと言い聞かせている。
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この道を歩いていた。
花束だけ残して石ころも錆びてしまった剣も傷つけられてしまったリュックサックも全部なかったことにして人と出会えたらいいのにといつも思う。
純粋な好奇心と、疑いのないまなこで文学を交換し笑顔で手を繋ぐ、星が降る日を迎えにいくから
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底の方には水が満ち満ちていて、いつの間にか息をするのを忘れていた。肺の中に水が溢れて苦しいときは左右を見渡すこと。空で生きて生きたいたいから鳥になりたい。カモメの渡海を見た。円を描いて空をみた。空で生きて生きたいから鳥になりたい。